皆さんは「FIA-F4」というレースカテゴリーをご存じでしょうか?SUPERGTを現地で観戦した事がある方は、1度は見た事があるかも知れません。サポートレースとしてSUPERGTと同日開催されるレースですが、サポートレースと侮るなかれ!今回は、そんな「FIA-F4」を徹底紹介します。この記事であなたもFIA-F4ファンになる事間違いなし!
FIA-F4って?
FIA-F4は、F1を頂点としたフォーミュラレースのF3の前段階として、国際自動車連盟(FIA)が2014年に規定を制定したレースカテゴリー。
日本では2015年からFIA-F4選手権がスタートし、主にSUPERGTのサポートレースとして同日開催されています。
フォーミュラカテゴリのレースでは、画像の様な階層※に分かれており、F1ドライバー・レーシングドライバーになりたい人は、レーシングカートから始める場合が多いです。
※FIA規定のフォーミュラレースをピックアップして簡略的に記載しておりますが、実際には細かく分かれています。
日本をはじめ、各国で独自の育成型フォーミュラ型プログラムや、各メーカーが支援する独自フォーミュラプログラムなどがありましたが、他フォーミュラカテゴリとのギャップが大きくなってしまう事が、日本のみならず世界的に課題となり、「FIA-F4」として統一。
2014年からイタリアを皮切りに、2015年には日本で、JAF地方選手権として創設され開催される事となりました。
イタリア・日本以外にも、イギリスやドイツ・中国でも開催されています。
マシンスペック
FIA-F4は、主要構成部品を国内企業が開発・生産した車両を使用する事となっています。
その為、使われているパーツ類は全て日本製。
使用される「童夢 F110」は、FIA-F4が定める車両規定に合わせて開発されたマシンで、F3などと同等の安全性が保たれたシャシーが使用されています。
ワンメイクと言えど、車両を構成するシャシー、エンジンなどを選択出来るのがFIA-F4のこのマシンの特徴です。
また、タイヤはダンロップから供給され、マシン・タイヤが全てイコールコンディションでレースが執り行われます。
その為、他のレースカテゴリよりも「腕」が物を言うレースとなっています。
SUPERGTと同日開催の理由とメリット
ほぼ全てのレースがSUPERGTと同日開催となっているのには、ある理由が。
日本で行われるFIA-F4選手権は、SUPERGTを運営しているGTアソシエイション(GTA)が総括しています。
その為、SUPERGTのサポートレースとして組み込む事ができ、国内の主要サーキットでレースをする事が出来るのです!
国内の主要サーキットでレース・走行の経験が出来る事以外にもメリットは沢山。
1つ目は、沢山の観客にアピールできる事。SUPERGTと同日開催という事で、沢山の観客に見てもらう事ができ「選手自身がアピールする」場として非常に効果があると思います。
2つ目は、モータースポーツ関係者の方が沢山介している場で、目に留めてもらえる事。
国内トップカテゴリであるSUPERGTには、沢山のモータースポーツ関係者・言わば「モータースポーツの第一線で活動している方々」が足を運ばれます。
国内レースの関係者に自身の活躍をアピールする場にもなるのです。
次世代のモータースポーツを牽引していく事となるドライバーたちが腕を競い合い切磋琢磨する「FIA-F4」には、関係者からも注目が集まっているのです。
若手ドライバー育成の場
前述の様に、次世代のモータースポーツを牽引していく事となるドライバーたちが腕を競い合い切磋琢磨するこのカテゴリでは、メーカーのドライバー育成プログラムや、レーシングスクールの育成プログラムが選手の参戦を支援するなど、バックアップ体制が充実しています。
トヨタ自動車は、独自のドライバーズプログラム「FTRS(フォーミュラトヨタ・レーシングスクール)」を優秀な成績で卒業し、スカラシップを得たドライバーのFIA-F4参戦を支援しています。
また、2017年のインディ500で日本人初・アジア人初の優勝を果たした、佐藤琢磨を輩出した「SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)」も同様に、受講生から選抜し、選考会で優秀な成績をおさめたドライバーに、FIA-F4参戦のスカラシップが与えられ、参戦をバックアップしています。
この様に、各方面からのバックアップ体制が充実している事が、このカテゴリの大きな特徴です。
実際に活躍しているドライバー
FIA-F4で活躍したドライバーが、ステップアップや別カテゴリで活躍しています。
坪井翔
坪井選手は、FIA-F4選手権が創設された2015年の初年度チャンピオン。
翌年2016年には、全日本F3選手権にステップアップし、シリーズ3位を獲得。
2017年からは、SUPERGTのGT300クラスに参戦しており、17年シーズンではシリーズランキング3位となりました。
今期2018年シーズンでは、#25 HOPPY 86 MCをドライブしています。
そんな坪井選手は今回、世界耐久選手権(WEC)に参戦する為に、Rd.2のみ参戦を辞退した小林可夢偉(#39DENSO KOBELCO SARD LC500)に代わり、参戦していた事は、SUPERGTファンの方であればご存知でしょう。
可夢偉選手の辞退を受け、3月の富士GT公式テストにて初めてステアリングを握る事となったのですが、そのテストでまさかのエンジントラブル。テストは中止となってしまいました。
マシンをろくにドライブ出来ていないまま、本番へと臨む事となった富士大会。
ですが、ここでもまたトラブルが発生。濃霧による視界不良にて中止に。予選日の公式練習時間が丸々なくなってしまう事になりました。
その為、予選方法も今回限りの特別な方法に変更され、予選をアタックするのは相方のヘイキ・コバライネン選手の為、コバライネン選手の練習が優先されました。
今回の予選方式では、1セッションのみの20分ノックアウト方式という特別なものだったので、ドライバー2人がQ1・Q2と担当に別れる事がなく、1セッションでタイムを出さなければいけない事となってしまった為に、よりマシンに慣れているコバライネン選手が担当する事になりました。
実際に坪井選手が走行出来たのは、わずか3周。公式練習では、GT300クラスとの混走の確認や、ロングスティントの走行確認など、本戦に通じる大切な確認をする時間でもありますが、そんな時間で十分な走行が出来ないまま、本戦へ臨む事となりました。
迎えた決勝レース。坪井選手がドライブする#39 DENSO KOBELCO SARD LC500は、前日の予選で5番グリッドからのスタートとなりました。
スタートドライバーは相方のコバライネン選手。レーススタートから着々と順位を上げ、23周目にはトップに浮上。
トップをキープしたまま、37周目に1回目のピットイン。そこで、坪井選手とドライバーチェンジします。
トップでのバトンタッチ。GT500新人の坪井選手にとっては責任重大なタイミングでのドライブ。私が同じ立場だったら、逃げ出したくなる様なプレッシャーに押されて潰れそうになります...。(汗)
ピットアウトし、重要なアウトラップの1周目を危なげなくクリア。トップを死守します。
ピットアウトした時点での2番手 #23 MOTUL AUTECH GT-Rとの差は約2秒。その後、難なく快調にドライブし、その差を7秒まで広げました。
75周目に、2回目のピットイン。コバライネン選手と交代しました。
ですが、ピット作業を含めたトータルタイムで、2番手を走行していた#23 に逆転されてしまいます。
その後も、トップに食いつく肉薄のレース展開でしたが、一歩及ばず2位でのチェッカーとなりました。
約38ラップの間、トップを死守し、その上後続との差を広げる程の速さ・活躍を見せ、GT500新人での表彰台獲得、現地で観戦していて、とても心動かされました。
第3戦以降は、再びGT300クラスの#25 HOPPY 86 MCにてドライブする事となりますが、今回のGT500クラスでの経験は、確実に糧になるでしょう。
また、この経験を持ってGT300クラスで戦う事により、新たな坪井翔の走りが見れるのではないでしょうか?
宮田莉朋
FIA-F4選手権が創設された2015年から参戦。15年シーズンでは、シリーズ15位という結果でしたが、翌年2016年シーズンでは見事シリーズチャンピオンを獲得。
また、同シーズンに全日本カート選手権 KFクラスでもシリーズチャンピオンを獲得しました。
2017年シーズンでは、シリーズが始まって初めての2連覇となるシリーズチャンピオンを獲得しました。
そんな宮田選手ですが、今期2018年シーズンはSUPERGTのGT300クラスに#60SYNTIUM LMcorsa RC F GT3で参戦しています。最年少の18歳での参戦という事で、各方面からも注目されています。
先日のRd.2富士では、前年よりもBoPが絞られてしまい、かなり厳しい戦いを強いられてしまいました。
予選は6位、決勝は7位でフィニッシュ。今後のレース展開によっては、シリーズ上位に上がってきてもおかしくない速さを持っているでしょう。
現在のSUPERGTでは、この2人のドライバーを含め7名のFIA-F4出身ドライバーが参戦していますが、全員のご紹介はもっと詳しく書いた記事をご覧あれ!(http://)
WLSGT!!が注目するドライバー「この人注目!」
今後のFIA-F4で編集部員が注目しているドライバーを何人かピックアップ。
将来の「SUPERGTドライバー」になるかも知れない!?
紹介するドライバー以外にも、若手ドライバーが多く参戦しているので、お気に入りのドライバーを見つけるのもいいかも知れませんね!
SUPERGTのマシンだけではなく、未来のGTドライバーになる可能性のあるFIA-F4ドライバーに注目して観戦すると、今までとは違った楽しみがありますよーっ!
角田裕毅
ゼッケン : 5
Team : Honda フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト
2005年、4歳からカートを始め、翌年の2006年には中井インターサーキットのキッズクラス シリーズチャンピオンを獲得。
その後もレーシングカートにて実力・実績を積み、2016年に全日本カート選手権KF部門に参戦しながら、SRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラ)に入校。
FIA-F4選手権には同年2016年から参戦し、弱冠16歳でのフォーミュラレースデビューとなりました。
2017年シーズンからHonda フォーミュラ・ドリーム・プロジェクトとして参戦。
先日の2018年シーズン第3・4戦富士大会では、両戦共にポール・トゥー・ウィンで連勝数を3に伸ばしました。
小高一斗
ゼッケン : 1
Team : TOM'S SPIRIT
2009年に、全日本ジュニアカート選手権 FP Jrカデットクラスでシリーズ1位を獲得。
2012年には地方カート選手権 FS-125, X30 シリーズ1位/ROTAX MAX Jr MAX シリーズ1位/
もてぎ選手権 Jr MAX シリーズ1位/など、活躍を見せ様々なタイトルを獲得。
FIA-F4には2015年から参戦しており、当時から関谷正徳さんが校長であるFTRSからの参戦です。
翌年2016年には、日本のFIA-F4史上最年少の17歳と1ヶ月で優勝し、話題となりました。
2018年シーズンは、第4戦終了現在でシリーズ5位につけています。
金澤力也
ゼッケン : 55
Team : フィールドモータースポーツ
2014年からレーシングカートを始める。短期間の間で、上級クラスにステップアップし、表彰台も獲得。その後18歳にフォーミュラレースに転向。
18歳の時に、ZAP SPEED Racing Team ドライバーオーディションを首席で合格。
FIA-F4には2016年から参戦しており、2017年には全戦参戦を果たしています。
2018年シーズンは、開幕から4位入賞。第4戦終了現在では、シリーズランキング4位に付けています。
大滝拓也
ゼッケン : 7
Team : Honda フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト
2015年に、前述にもあるSRS-F(鈴鹿サーキットレーシングスクールフォーミュラ)に入校。
第1段階である体験スクールでは、講師よりも早いタイムで走行するなど、経験が少ないながらも講師陣から高評価を得て、さらに上のクラスであるベーシックの受講資格を獲得。
ベーシッククラスでは、全く経験のないフォーミュラカーでの走行、講師にも劣らない速さを見せつけ、スクールの最終段階であるアドバンス進出者8名に選抜。
その後も着々と速さを見せつけ、スカラシップ選考会進出者に選抜されます。
選考会では、現役のF3ドライバーを押しのけトップタイムを樹立。
その成績から、日本人初のF1フルタイムドライバーであり、SRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール)の校長でもある中嶋悟から
「20年前にスクールを卒業しF1ドライバーまで登りつめた、佐藤琢磨以来の成長スピードだ。」
と言われる程の実力と速さを証明。
FIA-F4には、スカラシップ制度を利用し、翌年2016年から参戦しています。
まとめ
今回は、FIA-F4を特集しました。SUPERGT Rd.2富士で、初めてきちんとレースを観戦したのですが、その時「このレース面白いなぁ、記事にしたいな」と思いました。
次世代のモータースポーツを担っていくドライバーが熱いバトルを繰り広げるFIA-F4というレースは、SUPERGTとはまた違う面白さがあります。
また、現在参戦しているドライバーの多くが「将来、F1ドライバーになる」という夢を持っています。
皆さんも、次世代のスタードライバーになる可能性が大いにあるドライバー達が戦うFIA-F4というカテゴリにも注目して見てみて下さい。
SUPERGTのサポートレースだからと言って、侮るなかれ!