皆さんは上のステッカーをご存知でしょうか？ 「With Shingo」と書かれたこのステッカーはトムスが走らせるレーシングカーには必ず貼られているものです。「Shingoと共に戦う」という意味が込められておりこれまでトムスは「Shingo」と戦って来ました。その「Shingo」とは果たして誰なのか？今回は天才ドライバー「Shingo」こと舘信吾さんを特集します。

 

プロフィール、キャリア

 

 

1977年9月1日生まれ。東京都出身。実父は株式会社トムス代表取締役会長の舘信秀さんです。

12歳でカートデビュー。中学卒業後イギリスに渡り、1995年にフォーミュラ・ボクスホール・ジュニアに参戦。1996年にはイギリスF3Bクラスに参戦しランキング2位。

1997年に帰国し全日本F3にトムスから参戦しランキング6位。スーパーN1耐久シリーズではランキング4位に入りました。

1998年には全日本F3でランキング3位。スーパーN1耐久シリーズではランキング4位の成績を残し、当時注目の若手ドライバーとして将来を嘱望されていました。

 

 

GTキャリア

 

 

JGTCには1997年のツインリンクもてぎで開催されたオールスター戦でデビュー。トムスから鈴木利男選手とペアを組みスープラをドライブ。デビュー戦ながらいきなり2位表彰台を獲得しました。

翌1998年は土屋エンジニアリングから鈴木恵一選手とペアを組みMR2でGT300クラスにシリーズフル参戦。抜群の速さを持つ若手と絶対的な安定感を持つベテランのコンビネーションはライバル達を圧倒しました。

シーズン6戦中5勝を挙げオールスター戦でも優勝、ランキング2位に60ポイントもの大差を着けてシリーズチャンピオンを獲得しました。このシーズン5勝という記録は両クラス通じての年間最多勝記録として現在も残っています。

 

 

この活躍が評価され、1999年にはチームルマンから野田英樹選手とペアを組みGT500クラスへステップアップが決定。更にはTMSからフォーミュラニッポンへの参戦も決まり21歳にして国内トップカテゴリーのシートを手に入れました。

果たしてどんな活躍を見せてくれるのか。レース関係者、ファン、誰もが期待を寄せていました。

しかし、"早すぎた"天才はある日我々を置いて突然走り去ってしまいました。

 

1999.3.11

 

1999年3月11日、TIサーキット英田でのGT500スープラのテスト中。

1コーナーでコースアウトしタイヤバリアにクラッシュ。

舘信吾さんは21歳の若さでこの世を去りました。

JGTC開幕10日前に発生したこの事故は関係者、ファンに衝撃を与え、開幕戦のレース前にはサーキット場内で黙祷が行われました。

前年GT300でペアを組んだ鈴木恵一選手は愛弟子の早すぎる死に大きなショックを受け、現役引退を決断したと言われています。

チームルマンは鈴鹿サーキットでの開幕戦を欠場。野田選手とワイン・ガードナー選手を起用して第2戦から参戦しました。その第2戦決勝日の朝に行われたフリー走行では野田選手が「彼と一緒に走りたい。」と舘さんの遺品のレーシンググローブを着用して出走しました。

その後第5戦富士においてチームルマンはGT初優勝を達成しています。

 

まとめ

 

 

2019年、あの日から20年が経ちました。

あの日何も起こらなかったなら、舘信吾さんは41歳。まだまだ第一線で活躍していたでしょう。

あの日何も起こらなかったなら、舘信吾さんはどんな活躍を見せてくれたでしょうか。

トヨタF1に乗って、世界で戦っていたかもしれません。トヨタLMP1でル・マンを駆けていたかもしれません。

あの日何も起こらなかったなら、舘信吾さんには多くの可能性があったはずでした。それが失われてしまったことは残念でなりません。

モータースポーツは危険な競技です。過去多くの事故が起こってきました。安全性は年々向上して来ましたが、それでも毎年世界中の何処かでは痛ましい事故は起こっています。

安全への取り組みが止まることなく前に進み続けることを願わずにはいられません。